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ブランド名ではなく「レーデルオガワ」で検索してこの記事に来た方は、革の目が肥えているといっても過言ではありません。
財布の看板ではなく、革を仕上げた会社の名前で選ぼうとしているからです。そして知りたいのは、たいてい同じことです。この会社の革は、使い込んだらどう育つのか。
ところが検索しても、出てくるのは財布の宣伝ばかりで、革の育ち方を時間で示した記事がほとんどありません。
エイジングの体験談はあっても、何か月で何が起きるのかを整理したものがない。
この記事は、そこを公式の記載だけで埋めにいきます。読み終わるころには、買う前に知るべき時間割と、待つあいだにやること、やってはいけないことが手元に残るはずです。
育ちます。ただし、本気を出すまでに半年かかります。
これは感想ではなく、レーデルオガワの革を使う財布ブランドUNIQUEONの素材解説に、時間割つきで書いてあることです。
使いはじめの表面には薄いコーティングがあり、3か月ほどかけて少しずつ取れていく。半年ほどで革の繊維に直接触れられるようになり、そこからエイジングが本格化する。
この記事では、その時間割を軸に、育ち方と待ちかたを整理します。
レーデルオガワの革をいちばん確実に手に入れる入口は、仕上げ元が自分で売っているこのブランドです。
レーデルオガワとは

有限会社レーデルオガワは千葉県柏市にある、コードバンの加工と染色を専門にしてきた会社です。
革の世界では、皮を革に変える「鞣し」を行うタンナーと、その革を染めて磨き上げるフィニッシャーは別の仕事で、レーデルオガワは後者にあたります。
鞣しを終えた素材を仕入れて、染色し、コードバンの顔である艶を作る。宝石でいえば、原石を磨いてダイヤモンドにする側の会社です。
その原石を鞣しているのが、兵庫県姫路市のタンナー・新喜皮革です。UNIQUEONの公式は、レーデルオガワが「新喜皮革から仕入れ、加工・染色」していると書いています。
鞣しは新喜皮革、仕上げはレーデルオガワ。
この組み合わせの革は、UNIQUEONだけでなく複数のブランドの財布に使われていて、どこで買えるかは新喜皮革のコードバン財布はどこで買う?同じ革を使う3ブランドで比べています。
経年変化を考えるうえで、この分担は他人事ではありません。
革がどう育つかは、動物の質だけでなく、どう染めてどう仕上げたかで大きく変わるからです。同じコードバンでも、仕上げが違えば別の育ち方をします。
レーデルオガワの名前で革を選ぶことは、育ち方を仕上げで選ぶことに近いのです。
会社そのものの話はUNIQUEONは本当にレーデルオガワの革?で特定商取引法の表記まで確かめています。
もうひとつ、この名前が重い理由があります。
コードバンは繊維がみっしりと詰まって硬く、扱いに高度な技術と長い時間が要るため、手がけられる会社が世界でも数えるほどしかない革です。
そのなかでレーデルオガワは、約70年の研究を土台にしたコードバンとして製品ブランドの説明にも名前が出てくる存在です。仕上げ元の名前が製品の売り文句になる。
革の世界でも、そう多いことではありません。
色と仕上げで、革の育ち方はどう違う?
| 仕上げ | 性格 | 経年変化 |
|---|---|---|
| オイルコードバン | 油分が多く柔らかい。水滴の跡(ブク)が残りやすい | 手入れへの反応がよく、変化を楽しみやすい |
| アニリン染め | 水性染料のみ。硬めでハリとコシが強い。彩度の高い透明感 | 半年ほどで繊維に直接触れられるようになり、鋭い輝きへ育つ |
| 顔料染め | 塗膜で覆う。耐水性が高く傷に強い。ランドセルで実績 | 樹脂の塗膜は時間とともに劣化し、剥がれや割れに注意 |
| セミアニリン | アニリンと顔料の中間 | 両者の中間の性格 |
いわゆる「水染め」という言葉は、このアニリン染めを指して使われることが多いのです。この記事では公式の表記に合わせて、アニリン染めと呼びます。
表を見ると、顔料染めは「変化させない」ための仕上げだと分かります。
ランドセルが6年間きれいなままなのは、この塗膜のおかげです。経年変化を楽しみたい人の選択肢は、実質オイルかアニリンの2つ。
そしてレーデルオガワの名前とともに語られる透明感のある艶は、アニリン染めの世界です。
ここで自分の望みを一度、言葉にしてみてください。
6年間きれいなままでいてほしいのか、6年かけて別の顔になってほしいのか。前者なら顔料染めの製品を選ぶべきで、それは正しい選択です。
この記事の続きは、後者を望む人のための話になります。
最初の半年は「準備期間」

買った直後から3か月ほどは、表面に仕上げの薄いコーティングがある期間です。
このあいだは水を少しだけ弾きますが、それは革の力ではなくコーティングの力で、少しずつ取れていきます。
見た目の変化も、この期間はゆっくりです。買って1か月で「思ったより変わらない」と感じるのは、革が悪いのではなく、まだ準備期間だからです。
ここで手放してしまう人が、いちばんもったいない別れ方をしています。
半年ほどで、コードバンの繊維に直接触れられる状態になります。
ここからが本番です。手のひらや布との摩擦がじかに革へ届くようになり、磨けば磨くほど、縦にそろった繊維が光を返すようになる。
公式はこの状態を、オイルコードバンと同様にエイジングを楽しめて、鋭い輝きとフォーマルな質感を味わえる、と説明しています。
その先は、使った時間がそのまま艶に積もっていきます。
コードバンは繊維の密度が高く、5年10年と使ってもハリとコシが保たれる革だと公式が書いているとおり、型崩れでくたびれるより先に、艶が深まっていく。
買った日がいちばん美しい革ではなく、半年後、1年後のほうが確実に良い顔をしている革です。
進み方の速さは、持ち方で変わります。
毎日ポケットに入れて手で触れる人の革は早く育ち、鞄の中で眠っている時間が長い革はゆっくり育ちます。変化の主役が摩擦だからです。
同じ財布を買った2人でも、1年後の顔は同じになりません。そこがこの革の、いちばん面白いところでもあります。
変化を早める近道はあるか
正直に言うと、近道らしい近道はありません。
強くこすって艶を急がせるより、毎日連れ歩いて、使ったら拭く。
この積み重ねがいちばん速いのです。ひとつだけ足すなら、買った日に写真を1枚撮っておくことをすすめます。変化は毎日見ていると気づけません。
半年後に同じ角度で撮って見比べたとき、時間割どおりに育っていることが、はっきり分かります。
比較の目安。3か月・半年・1年で見た目はどうなる
| 時期 | 表面の状態 | 見た目の目安 |
|---|---|---|
| 買った直後 | 仕上げの薄いコーティングがある | むらのない整った艶。水を少しだけ弾く |
| 3か月ごろ | コーティングが少しずつ取れていく | 変化はゆっくり。目立って変わらなくても順調 |
| 半年ごろ | 革の繊維に直接触れられるようになる | 摩擦が届きはじめ、艶が深まる方向へ動き出す |
| 1年以降 | 使った時間がそのまま積もる | 透明感のある鋭い輝きへ。ハリとコシは保たれたまま |
いま起きている変化は、正常ですか
すでに使っている方のために、判定の目安を置いておきます。
1か月でほとんど変わらないのは正常です。3か月ごろに表面が少し曇って見えるのも、コーティングが取れていく途中の姿で、異常ではありません。
半年ごろから艶が出はじめれば、時間割どおりに進んでいます。逆に、半年を過ぎても光が戻らないときは、育ち方ではなく手入れの側を疑ってください。
次の章でその原因を扱います。
買う前の方には、色選びの指針をひとつ。アニリン染めは色そのものが大きく変わるのではなく、透明感が深まる方向に育ちます。
店頭や画面で見て気に入った色を、そのまま選んで構いません。
オイルコードバンについて
経年変化を目当てにする人が最後に迷うのはオイルコードバンとの二択です。
オイルコードバンは油分をたっぷり含ませた仕上げで、柔らかく、手入れへの反応が早い革です。
クリームを入れれば艶が戻り、色も深まっていく。そのかわり水滴が跡になりやすく、色落ちや色移りも起こると公式は説明しています。
変化が大きいぶん世話の楽しさと世話の必要が両方ある革です。もともと靴づくりの現場で使われてきた仕上げで、曲げに耐える柔らかさはそこから来ています。
アニリン染めは、硬めでハリとコシが強く、変化はもう少し静かに進みます。
派手に色が変わるというより、透明感のある艶がじわじわ深まる方向です。ビジネスの場に持つなら、この静けさは長所になります。
名刺交換の場で悪目立ちせず、それでいて見る人が見れば分かる光り方をする。育てる楽しみと、仕事道具としての折り目正しさの、ちょうど中間にいる革だと考えてください。
どちらが上ではなく、世話焼きが楽しい人はオイル、静かに育てたい人はアニリン。この分かれ方です。タンナーや仕上げ元ごとの顔ぶれはコードバンのタンナー比較で整理しています。
あいだの手入れは「拭く」だけでいい
半年の準備期間に、何かしてやりたくなります。そこで焦ってクリームを塗り込むのが、いちばんよくある失敗です。
やることは2つだけです。
使ったあとに乾いた柔らかい布でさっと拭く。そして濡らさない。
アニリン染めは3か月でコーティングが取れていき、防水性能はないと公式が明記しているので、雨の日は鞄の中で守ってください。
濡れてしまったら、こすらずに布で水分を押さえて、日陰で自然乾燥。ドライヤーの熱は急な乾燥でひび割れを招くため使いません。
クリームやワックスは、乾燥が気になってからごく少量で足ります。
油分を入れすぎると、せっかくの透明感がくもってしまう。手の脂と乾拭きの摩擦だけでも、コードバンは十分に育ちます。
手入れの回数を増やすより、毎日ポケットで連れ歩く時間を増やすほうが、この革はよく応えます。頻度の目安はコードバンの手入れの頻度にまとめました。
道具を1つ足すなら、毛の柔らかい馬毛のブラシです。
縫い目にたまるほこりを払えて、布より広い面をむらなく磨けます。乾拭きの布とブラシ。この2つがあれば、半年の準備期間にやることは全部そろいます。
くすんで見える3つの原因
育てるつもりで手をかけた結果、艶が出ずに、くたびれた見た目になってしまうことがあります。原因はたいてい次の3つです。
1つめは、クリームの塗りすぎ。
油分を入れすぎると透明感がくもると公式が書いているとおり、良かれと思って重ねた油が、コードバンの持ち味である澄んだ艶をふさいでしまいます。乾燥が気になってから、ごく少量。これが上限です。
2つめは、濡らすこと。
アニリン染めに防水性能はありません。雨や水滴はしみや跡になり、あとから磨いても艶では隠せない部分が残ります。
濡れたらこすらず布で押さえて日陰で自然乾燥。ドライヤーの熱は急な乾燥でひび割れを招くので使いません。
3つめは、こすりすぎ。
変化の主役は摩擦ですが、強くこすって急がせても、時間割は縮みません。力を入れるほど表面を痛め、光の反射がそろわなくなります。
正しく育った艶と、くすみの見分け方
窓際で革を傾けてみてください。正しく育った艶は、縦にそろった繊維が光を返すので、光が帯のようにすっと映り込みます。
くすみは、表面全体が白っぽくぼんやりし、角度を変えても光が帯にならない。乾いた布で軽く拭いて艶が戻るなら、まだ表面の問題です。
戻らないなら、油分の入れすぎか、水じみを疑ってください。
最初の半年は、やることを増やさないほうが結果が良くなります。拭く、濡らさない、毎日連れ歩く。この3つだけを守った革が、いちばんきれいに育ちます。
レーデルオガワの革財布を手に入れるには

レーデルオガワは革の仕上げ元なので、革そのものは店頭に並びません。この会社の革だと公言している製品を選ぶことになります。
いちばん分かりやすいのがUNIQUEON(ユニコーン)です。
通販サイトの特定商取引法に基づく表記の販売業者欄に有限会社レーデルオガワと書かれている、仕上げ元が自分で売っているブランドで、財布は5種類・税込26,400円から89,100円まで。
表にアニリン染めコードバン、内装に国産の牛ヌメ革という構成です。東京の銀座1丁目に旗艦店もあるので、艶の実物を見てから決めることもできます。
仕上げ元の直販だけあって、値段はコードバンとしては踏み出しやすい水準に収まっています。
26,400円のミニウォレットなら、この記事で書いた半年の時間割を、腕試しのサイズで体験できます。育てる革の入口として、悪くない一歩です。
もちろん、他のブランドの商品ページでも「レーデルオガワのコードバン」という表記は見かけます。
それ自体は珍しくありません。気をつけたいのは、同じ名前が書いてあっても、仕上げの仕様まで同じとは言い切れないことです。
「水染め」という言葉の範囲が会社ごとに違う話と同じで、名前は入口、仕様は商品ページで確かめる。この順番だけ守れば、ブランドをまたいで比べても迷子になりません。
レーデルオガワの経年変化でよくある質問
Q. どのくらいで変化が出はじめますか?
公式の説明では、表面のコーティングが3か月ほどで少しずつ取れ、半年ほどで革の繊維に直接触れられるようになります。
目に見える艶の変化を実感するのは、その半年以降からが本番です。毎日手で触れる持ち方なら早まり、鞄にしまいがちなら遅くなります。
Q. 経年変化で傷は目立たなくなりますか?
浅い線傷なら、使い込んで全体の艶が深まるにつれて背景に沈み、目立たなくなっていきます。コードバンの傷との付き合い方は別の記事で詳しく書いているので、傷が心配で迷っている方はそちらもどうぞ。
Q. 色は濃くなりますか?
アニリン染めの持ち味は、色そのものの変化より、透明感のある艶が深まっていく方向です。染料特有の彩度の高い色合いが、磨かれて輝きを増していきます。色の劇的な変化を求めるなら、オイル系の革のほうが向いています。
Q. 水に濡れたらどうなりますか?
使いはじめはコーティングで少し弾きますが、防水性能はないと公式が明記しています。濡れたら、こすらず乾いた布で押さえて日陰で自然乾燥させてください。雨の日にむき出しで持ち歩く革ではありません。
Q. 手入れの道具は何を買えばいいですか?
まずは乾いた柔らかい布が1枚あれば足ります。クリーム類は乾燥が気になってからごく少量で十分で、UNIQUEONの公式ストアにはケア用品の棚もあります。塗りすぎだけは避けてください。
Q. 他のブランドの財布でも、この革は使われていますか?
「レーデルオガワのコードバン」と明記して売られている製品は、複数のブランドにあります。ただし表記が同じでも、染めや仕上げの仕様まで同じとは限りません。名前で目星をつけて、仕様は各商品ページで確かめる、という順番が確実です。
Q. レーデルオガワの革は、どの製品で買えますか?
仕上げ元が販売元を兼ねるUNIQUEONが、いちばん確実な入口です。財布のほかにコインケース・名刺入れ・キーケースなどの小物もあり、同じ革で揃えられます。
まとめ
レーデルオガワのコードバンは、買った瞬間に完成している革ではありません。
3か月かけてコーティングが取れ、半年かけて素の繊維が顔を出し、そこから艶が積もりはじめる。
この時間割を知らずに買うと、最初の1か月で「思ったほどではない」と誤解します。知って買えば、同じ1か月が楽しみな待ち時間に変わります。
静かに、確実に、長く育つ。
仕事道具として革を持つ人に、これほど合った性格はそうありません。買う前のいまは、宝石のような艶の完成形を画面で眺めているだけです。
半年後、その艶が自分の手で磨かれたものに変わっている。
半年後の自分の財布を見てみたくなったら、仕上げ元の棚から始めてください。
