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コードバンの手入れの仕方は、調べればいくらでも出てきます。ところが「どのくらいの間隔でやるのか」は、書いてあるものによってばらばらです。
先に答えを書きます。乾拭きは使ったあと毎回、クリームは2〜3か月に1回。これで足ります。
私は水染めコードバンの二つ折り財布を4年7か月使っています。この間隔で、乾燥で困ったことは一度もありません。逆に、間隔を詰めると別の問題が起きます。
頻度の目安を、先に表で

| やること | 頻度 | かかる時間 |
|---|---|---|
| 乾いた布で拭く | 使ったあと毎回 | 5秒 |
| 馬毛ブラシでほこりを払う | 週に1回ほど | 10秒 |
| クリームを薄く塗る | 2〜3か月に1回 | 1分 |
| 濡れたときの手当て | その場で | 数分 |
これだけです。道具も、乾いた布とコードバン用のクリームがあれば足ります。専用のセットを買いそろえる必要はありません。
なぜ2〜3か月に1回なのか
間隔の理由は、コードバンという革の作りにあります。
コードバンは、馬のお尻の皮の内側にある繊維の層を削り出して作ります。表面の皮を削って中から出てくる層なので、毛穴がありません。あの艶は、この緻密な繊維を磨き上げて出しています。
毛穴がないと、何が違うのか
牛革なら、毛穴からクリームが中へ入っていきます。コードバンにはその入り口がありません。
だから、塗った量のうち革に入るぶんは限られます。入りきらなかったクリームは表面に残り、白っぽい膜になります。磨いても取れにくく、艶が濁って見えます。
月に1回のつもりで塗り続けると、この膜が重なっていきます。コードバンで多い失敗は、手入れ不足ではなく、やりすぎのほうです。
1回に使う量は、米粒ほどです
頻度と同じくらい大事なのが量です。
| やりがち | 実際に必要な量 | |
|---|---|---|
| 取り方 | 布にたっぷり | 指先に米粒ほど |
| 塗り方 | 全体に厚く | 薄く伸ばして終わり |
| 仕上げ | 強く磨く | 乾いた布で軽くなでる |
指に取って、体温で少し柔らかくしてから伸ばす。財布1つで、これを1〜2回繰り返せば全面に行き渡ります。布に取ると、思っている以上の量が付きます。指のほうが加減しやすいところです。
手順の詳しい話はコードバンのお手入れ方法に書きました。この記事は「いつやるか」に絞ります。
仕上げによって、間隔は変わります

ここが見落とされがちなところです。同じコードバンでも、仕上げによって必要な間隔が違います。
| 仕上げ | クリームの間隔 | 理由 |
|---|---|---|
| 水染め | 2〜3か月に1回 | 油分が控えめ |
| オイル仕上げ | 3〜4か月に1回でも | もともと油を多く含む |
| アニリン染め | 2〜3か月に1回 | 色移りに注意 |
| 顔料仕上げ | 間隔を空けてよい | 表面に膜がある |
ホーウィン社のシェルコードバンのようなオイル仕上げは、革そのものが油をたっぷり含んでいます。水染め用のつもりで同じ量を塗ると、曇ります。
自分の財布がどの仕上げかは、買ったブランドの公式ページに書かれているはず。コードバンの仕上げを手がける職人が立ち上げたUNIQUEONは、コードバンのお手入れについてというページを別に用意しています。作り手の案内があるなら、まずそれに従うのがいちばん確かでしょう。
季節でも間隔は動きます
2〜3か月というのは平均の話です。実際には、季節で必要な間隔が変わります。
| 季節 | 間隔の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 春・秋 | 3か月に1回 | いちばん穏やかな時期 |
| 梅雨 | 塗らなくてよい | 湿気が多い。カビに注意 |
| 夏 | 3か月に1回 | 汗と車内の熱に注意 |
| 冬 | 2か月に1回 | 空気が乾く。暖房の風に注意 |
梅雨に塗らないほうがいい理由
空気に水分が多い時期は、革も乾きません。そこへ油分を足すと、湿気とあいまってカビの元になります。日本の梅雨は、革にとって1年でいちばん気を使う時期です。
この時期にやるべきは、塗ることではなく風を通すことです。鞄や引き出しに入れっぱなしにせず、たまに空気に当ててください。
冬は間隔を詰める
逆に冬は、部屋の空気が乾きます。暖房の効いた部屋に長く置くと、革の水分が抜けていきます。2か月に1回へ詰めるくらいがちょうどよいところです。
道具は、何をそろえればいいのか
頻度が決まったら、次は道具です。最小限で足ります。
| 道具 | 要否 | 用途 |
|---|---|---|
| 乾いた柔らかい布 | 必須 | 毎回の乾拭き |
| コードバン用クリーム | 必須 | 2〜3か月に1回 |
| 馬毛ブラシ | あると便利 | 縫い目のほこり払い |
| 防水スプレー | 要注意 | 専用と書かれたもの以外は避ける |
| クリーナー(汚れ落とし) | 基本は不要 | 強いものは艶を落とす |
買わなくていいもの
革のケア用品は種類が多く、セットで売られていることもあります。ただ、コードバンで使う場面が少ないものが混じっています。
とくにクリーナーは注意が必要です。汚れを落とす力が強いものは、表面の艶まで落とします。普段の汚れは乾拭きで十分に取れます。
クリームを選ぶときに見るところ
コードバン用と明記されているかどうか。これが第一です。次に、色付きか無色か。色付きは、色を補う代わりに手が汚れたり、他の物へ移ったりします。迷ったら無色を選んでください。
正直に言うと、頻度より大事なことがあります
ここまで間隔の話をしてきましたが、実際に革の状態を決めているのは、もっと手前です。
カレンダーではなく、革を見て決めてください。
塗りどきの見分け方
| 革の様子 | 判断 |
|---|---|
| 艶があり、しっとりしている | まだ要らない |
| 光の反射が鈍くなってきた | そろそろ |
| 手で触ると乾いた感じがする | 塗りどき |
| 折り目の縁が白っぽい | 塗りどき |
| 表面が白く曇っている | 塗りすぎ。乾拭きへ |
2か月経っていても、艶が残っているなら塗らなくて構いません。逆に1か月で乾いた感じがするなら、そこで塗ってください。
私の財布は、実際には2か月に1回のときもあれば、3か月空くこともあります。間隔を守ることが目的ではなく、革を良い状態に保つことが目的だからです。
使い方によっても、間隔は変わります
同じ財布でも、持ち主によって傷み方が違います。自分がどの型に近いかで、間隔を調整してください。
| 使い方 | 間隔の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 毎日ポケットに入れる | 3か月に1回 | 手の脂が常に入る |
| 毎日鞄に入れる | 2〜3か月に1回 | 触る回数が少なめ |
| 週末だけ使う | 2か月に1回 | 油分が入りにくい |
| ほとんど使っていない | 2か月に1回+風通し | いちばん乾く |
意外に思われるかもしれませんが、いちばん手がかかるのは「使っていない財布」です。手の脂が入らないので、放っておくと乾いていく一方になります。
しまい込んでいる革こそ、出してください
箱に入れたまま数年、という方は少なくないでしょう。この状態は革にとって良くありません。乾燥に加えて、閉め切った場所では湿気もこもります。
月に一度でいいので、箱から出して空気に当ててください。そのときに乾拭きをして、乾いていればクリームを薄く。これだけで状態が保てます。
2本を交代で使う場合
財布を2つ持って使い分けている方は、休ませているほうの手入れを忘れがちです。使っていない期間も時間は進みます。交代のタイミングで、両方を見る習慣にすると抜けません。
乾拭きは、なぜ毎回なのか

クリームの話が長くなりましたが、日々効いているのは乾拭きのほうです。
手で触れば、脂と汗が付きます。それを放っておくと、ほこりと混ざって表面に薄い層を作ります。この層が艶をくすませます。
やることは、使ったあとに乾いた布でひと拭き。時間にして5秒ほど。これを続けている財布と、していない財布では、1年後にはっきり差が出ます。
布は何を使うか
柔らかく、毛羽の出ないものなら何でも構いません。眼鏡拭きでも、着なくなった綿のシャツでも足ります。専用の布を買う必要はありません。ただし、化学繊維のタオルは毛羽が残ることがあるので避けてください。
ブラシは要るのか
あると便利ですが、なくても困りません。馬毛の柔らかいブラシは、縫い目やコバの隙間に入ったほこりを払うのに向きます。週に1回、さっと払う程度で十分です。
手入れの日を忘れないための工夫
2〜3か月という間隔は、意外と忘れます。毎日のことなら習慣になりますが、季節に1回だと抜け落ちるものです。
季節の変わり目に合わせる
3月・6月・9月・12月というように、季節が変わる月に決めてしまうやり方があります。年4回。これなら覚えやすく、季節ごとの注意点とも噛み合います。
ただし6月は梅雨に当たるので、その回は塗らずに風を通すだけにしてください。実質は年3回になります。
別の予定にくっつける
革靴を磨く日、衣替えの日、部屋の大掃除の日。すでにある習慣にくっつけると忘れません。財布1つなら1分で終わるので、何かのついでで足ります。
写真を撮っておく
手入れをした日に1枚撮っておくと、次にいつやったかが分かります。あわせて色の変化の記録にもなります。半年前の写真と並べると、思っていたより育っていることに気づきます。
4年7か月やってきて、分かったこと
私がやってきたのは、本当にこれだけです。
使ったあとに乾いた布でひと拭き。2か月に1回ほど、指に米粒ほどのクリームを取って薄く伸ばす。濡らさない。日に当てない。
その結果どうなったか。色は買ったときより深くなり、内側のヌメ革も濃くなって、外と内で色が揃ってきました。光の反射は、新品の鋭さから柔らかいものへ変わっています。
一方で、折り目の縁は色が剥げ、角は少しスレています。一度だけ雨に濡らした角は、いまも周りと色が違います。頻度を守っても、防げないものはあります。
特別な道具は買っていません
コードバン用のクリームが1つあるだけです。専用のブラシも、磨き布のセットも、防水スプレーも使っていません。布は着なくなったシャツを切ったものです。
革の手入れは道具を増やすほど良くなる、という思い込みがあります。コードバンに関しては、逆でした。触る回数を減らすほうが、きれいに保てます。
やりすぎたときは、どうするか
塗りすぎて表面が曇ってしまった場合、まず乾いた布で何度も乾拭きしてください。力を入れず、軽くなでるように。
表面に浮いたクリームは、時間をかければある程度は落ちます。数日おきに繰り返すと、少しずつ艶が戻ってきます。
それでも取れないときは、自己流で溶剤を使わないでください。革製品の修理を扱う店に相談するほうが安全です。失敗の話はコードバンのエイジングは失敗する?にまとめました。
やりすぎを防ぐ、いちばん簡単な方法
クリームを手の届くところに置かないことです。財布のそばに置いておくと、気になるたびに触ってしまいます。
引き出しの奥にしまって、季節の変わり目に取り出す。それくらいの距離感がちょうどよいと思います。コードバンは、手をかけない勇気が要る革です。
コードバンの手入れの頻度についてよくある質問
Q. 買ったばかりでも塗ったほうがいいですか
要りません。新品はブランドの側で仕上げが済んでいます。最初の数か月は乾拭きだけで足ります。買ってすぐ塗りたくなる気持ちは分かりますが、そこは我慢どころです。
Q. 毎日使う財布と、たまに使う財布で違いますか
違います。毎日使うものは手の脂が入るので、間隔を空けても大丈夫です。たまにしか使わないもののほうが乾きます。しまい込んでいる革こそ、たまに出して塗ってください。
Q. 靴用のクリームで代用できますか
やめておいたほうが無難です。靴用は油分や顔料の量が違います。コードバン用と書かれたものを選んでください。
Q. ベルトや靴も同じ間隔ですか
ベルトは曲げ伸ばしが激しく、汗にも触れるので、財布より短い間隔になります。靴は歩くたびに屈曲するので、さらに手がかかります。財布がいちばん間隔を空けられる部類です。
Q. 手入れをまったくしないと、どうなりますか
すぐには壊れません。ただ、乾燥が進むと折り目からひび割れが出ます。擦れは味ですが、ひび割れは戻せません。この境目を越える前に手を入れるのが、間隔を決める本当の意味です。逆に言えば、そこさえ越えなければ神経質になる必要はないということです。
Q. 内装のヌメ革も同じ間隔でいいですか
内装は外装ほど乾きません。手や紙幣に触れて、脂が入り続けるためです。外装を塗るときに、ついでに軽く拭く程度で足ります。塗るとしても、外装よりさらに少ない量にしてください。
Q. 湿度計を置いたほうがいいですか
そこまでしなくても構いません。ただ、寝室や書斎に1つあると、梅雨と冬の判断が早くなります。革のためというより、部屋の状態を知る道具として置いておくと便利でしょう。
Q. 何か月も放置してしまいました
まず状態を見てください。艶が残っていれば、乾拭きしてから薄く1回塗れば戻ります。ひび割れが出ているなら、自分では戻せません。
まとめ|カレンダーではなく、革を見てください
目安を並べると、こうなります。乾拭きは使ったあと毎回、クリームは2〜3か月に1回、量は米粒ほど。
ただし、これは平均の話です。梅雨は塗らない、冬は間隔を詰める。そして何より、艶が残っているなら塗らなくていい。使っていない財布のほうが乾く、という点も覚えておいてください。
コードバンは、放っておいても構いすぎても状態を崩します。触る回数を減らして、そのぶん革をよく見る。4年半やってきて、これがいちばん確かなやり方でした。
これから買う方は、自分が選ぼうとしている革がどの仕上げなのかを、公式で確かめるところから始めてください。そこが分かれば、間隔の答えも一緒に出てきます。
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